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株式会社医科歯科技研 藤原芳夫社長の論文を読んで
第7回

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図22 歯科用スキャナの軽装原理と被写界深度

(「TRIOS}の被写界深度についてメーカーは公表しておらず、筆者の実験データである)

三角測量と共焦点法は入射光と反射光が一定の角度以上になることを必要とするが、フェイスコントラスト法は入射光と反射光が同じ

経路を辿る。

 IOSを使用してスキャンする場合、機種によって被写界深度や被写界角度が様々である事も報告されています。図21は同じ模型をA社のIOS(A、C)と『PrimeScan』(B、D)で計測したSTL画像です。A、Bどちらも奥の方まで計測出来ている様に見えますが、A、Cの方は明らかに未計測部が自動補正されており、双方とも角度を変えて観察すると、ポストの長さが違う事が解ります。被写界深度はA社のIOSの方が深いのですが、被写界角度が大きい為、奥の方が計測出来なかったと思われます。それに比べ、Dは最深部まで計測出来ていると思われ、EはC、とDを半透明にして重ねた画像ですが、CはDの半分程度しか計測出来ていない事が解ります。

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図21 ポストコアの計測能力(被写界角度)の違い

A,C:A社IOSによる計測データ,B,D:「PrimeScan」による計測データ,E:C,Dを重ねたもので、Cのデータ欠落部が大きいのが

わかる。

 そのPrimeScanの計測法ですが、他のIOSの三角計測法や共焦点方とは違う特殊なフェイズコントラスト法(ハイフリークエンシー・コントラスト法)を採用しており(図22)、その事から、おそらく被写界角度は10度以下を達成していると推測されます。フェイズコントラスト法以外の2法は、レーザー光の入射光と反射光の経路が一定以上の角度を持たないと精度が確保出来ないのに対し、フェイズコントラスト法は入射光と反射光の経路が一致している為、被写界角度を小さく出来ると思われます。ポストコア以外の計測ではどのIOSでも十分使えるのですが、医科歯科技研様ではポストコアに限ってPrimeScanを使用しているとの事です。また医科歯科技研様では、IOSは印象そのものを計測出来るので、印象本体のスキャンは全てIOSを使用していると書かれてあり、ラボスキャナによる模型スキャンとIOSによる印象スキャンでどの程度の違いがあるかの比較実験も報告されています。

 図24のA、Bを検体としてスキャンデータを取得し比較したのがD、Eで、CはBの拡大写真です。DはPrimeScanにより印象体Aをスキャンしたもの、Eは石膏模型Bをラボスキャナでスキャンしたものですが、Dは石膏模型Cに近いエッジを再現しているのに対し、Eは明らかにエッジが丸くなっているのが解ります。その違いを数値化したのが図25で、Aは図24のD、Eを重ねた画像です。エッジ部分は全てDの方が、より正確に再現出来ており、その数値を求めたのがB、C、D、Eの図です。

図24 模型スキャンと印象スキャンの比較

A:印象体、B:石膏模型、C:石膏模型の拡大、D:「PrimeScan」によって印象体Aから取得したSTLデータ、E:ラボスキャナーに

よって石膏模型Bから取得したSTL

DとE、どちらがエッジをよく再現できているか明らかである。

図25 模型スキャンと印象スキャンの比較

A:模型スキャンと印象スキャンを重ね合わせたもの、B,C,:Aの断面を切り出し、エッジロス量を比較したもの、D,E:Bより鋭利なエッジを

持つ部分の断面を切り出し、エッジロス量を比較したもの。

 B、Dの拡大図C、Eを見るとBに比べ、エッジが鋭利なDの方が「エッジロス」の量が増加していますが、どちらも30μm以上であり、決して見過せない数値です。以前「エッジロス」の量を検体で実験した時、ラボスキャナとIOSには余り違いが無かったのですが、今回は凹型の印象体と凸型の石膏模型で実験した為、スキャナが以前とは違う挙動を示したのではないかと推測されています。結果的に3ユニットまでなら石膏模型をラボスキャナでスキャンするよりも、直接印象体をIOSでスキャンする方が再現性は高く、精度も十分であると言え、これもIOSを使用する利点に上げておられます。

 図31はインレーの石膏模型をラボスキャナとIOSのスキャンデータを比較したものです。検体Aをそれぞれのスキャナで計測したSTL画像がB、C、それらを重ね合わせた画像がDです。

 IOSでスキャンしたBの方がラボスキャナでスキャンしたCよりも「エッジロス」が少ない様に見えますが、Dを見るとより一層よく解り、インレーの計測でもIOSの優位性が認められます。

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図31 ラボスキャナVSIOS

A:検体(石膏模型)、B:「PrimeScan」によるスキャンデータ、C:ラボスキャナによるスキャンデータ、D:BとCを重ね合わせたもの。

出展元:歯科技工 September 2022 vol.50 no.9 

特集 歯科技工にIOSが必要な理由(ワケ) page844〜page852より

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