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株式会社医科歯科技研 藤原芳夫社長の論文を読んで
第4回

 (株)医科歯科技研様では、歯科医師がチェアサイドで使用するIOS(Intra Oral Scanner : 口腔内スキャナ)を使用し、印象模型全体のほぼ2/3を可撤式模型の製作をする事なく、またトリミングもせずにスキャンして技工作業を進めるとの内容が、歯科技工の特集『歯科技工所にIOSが必要な理由(ワケ)』に書かれてありましたので、その内容をご紹介させて頂きます。

 

 私は歯科技工所で使用するスキャナと言えば、ラボスキャナ(デスクトップ型スキャナ)と言われる据え置き型の石膏模型を読み取るスキャナの事を認識していました。その模型の歯肉縁下にあるマージンを読み取るため、通例に従い可撤式模型を製作し、そのマージン部をトリミングよって再現した後、模型をスキャンしてCADソフトで設計に入る流れを考えていましたが、特集に記載されていた内容は、医科歯科技研様では以前、ラボスキャナを7台使用していたものが現在は1台しか使用しておらず、その代わりに歯科医師がチェアサイドで使用するIOS(Intra Oral Scanner : 口腔内スキャナ)5台(図1)を使用して読み取り、STLデータ(Standard Triangulated Language Data)を取得してCADソフトで処理しているとの事でした。印象模型全体のほぼ2/3は可撤式模型の製作をする事なく、またトリミングもせずにスキャン後、技工作業を進めると書かれてあり、その方法を「スマート法」と呼び、好結果を得ているとの内容で、その根拠と利点が述べられていました。

 その「スマート法」の始まりは、ラボスキャナでは支台歯のマージン付近がスキャン出来ないため、分割模型を製作し、支台歯部をトリミングした後、支台歯模型と共に対合歯をスキャナによりテータ取得してからクラウンやインレーのデザインを始める。

 それらの作業の中、藤原社長は「もし、ここでIOSを使用したらどうだろうか?」とのひらめきから、IOSなら分割模型を製作しなくても支台歯のマージンまでデータを取得でき、インスツルメントを使用せずにCADソフトでデザインをするのだから、トリミングも必要ない。つまり印象模型の底面と側面を奇麗に整えるだけ、或いは歯肉がマージンを覆い、スキャンし難い処をナイフでカットするだけで模型製作は完了する。また、コンタクト調整が難しい処や造形後、マージン調整が必要な場合のみ、分割模型を製作するかプリント模型を製作する。その結果ジルコニアからインレー、コアに至るまで、全ての模型をIOSでスキャンする事から一日が始まるとの事でした。(図2A~2C)

​ 医科歯科技研様では毎日100ケース程度「スマート法」を用いて作業をしておられるとの事ですが、以前は1日150~200個程度の分割模型を製作していたものが、模型の製作は約2分の1に減少し、1日2時間程度の技工作業の時間短縮が出来たと書かれてあり、支台歯のトリミングもしない事から石膏の粉塵が大幅に減少し、作業環境も多少改善されたとの事です。

 

 一般的に支台歯をトリミングしてから、ラボスキャナでデータを取得する場合、必ず「エッジロス」を起こす事は前稿で紹介しましが、一連の操作で、既に歯肉情報は失われており、支台歯のショルダーマージン等エッジ部のデータは欠落している事になりますが、「スマート法」はトリミングをしていないため、エッジ部が強調されないので、全ての症例ではないが「エッジロス」現象を起こす事なく、計測可能であるとの事です。(図7B)

 図7Aではエッジが存在するので、その部分はスキャナによってノイズとして認識され、計測物の透明性(石膏には透明性がある材料との認識)により、エッジ部のデータが欠落しますが、図7Bの様に歯肉と歯質が接近している場合、もしエッジの奥に計測点が存在しても、それはノイズとして認識され、形状ラインはマージンのエッジを認識する事なく歯肉形状部へと移行するとの事で、藤原社長はこれを「スキャナを騙すエッジロス解決」と呼んでおられます。

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