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株式会社医科歯科技研 藤原芳夫社長の論文を読んで
第3回

第3回目の今回は、オフセット量の設定について書かれていたので説明したいと思います。

オフセットは、元々ミリングする際に薄いマージンが欠けないように厚みを持たせるための機能で、そのオフセット量はユーザーが自由に設定出来るようになっている。メーカーの初期設定では50~100㎛程度に設定されている事が多いが、医科歯科技研様ではエッジロスの捕捉のために150~200㎛に設定しているとの事です。このオフセット量はマージンを設定した位置、つまりエッジロスを起こす手前に設定したマージンラインの位置と、推測される実際のマージンとの距離で変わります。

 

このことはスキャナの種類と再現性の項目に書かれていた内容や接線角度とショルダー角にも大きく影響をうけると書かれており、エッジロス量が少ないinEosX5では150㎛、その他では200㎛、またショルダー角度90度で接線角度50度の場合は170㎛を標準値にされている様で、オーバー気味な数値設定ではあるが研磨ロスの担保とショートマージンを避ける意味で設定していると述べられています。(図17)

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しかしながら、この方法には欠点があり、ショルダーに一定以上の角度が付いている場合には適用出来ない様である。ショルダーに図24aの様な傾きがある場合、図24bの様に不足分を補うオフセット部も傾けるべきであるが、①オフセットにおいては、オフセット角を自由に設定出来ずにアリメントに対して90度に固定されているため、推測されるマージンの位置に延長する事が出来ないため、傾きが大きくなると差異が大きくなり、オフセット機能利用法は無意味になってしまう。

 

 以上のことからCADソフトによるエッジロス解決法の注意点としては、出来れば支台歯形成時のショルダー角度を90度、あるいは80度以上を全周にわたって維持する事、そして75度以下の場合は、この方法は無意味であると言う事であり、医科歯科技研様ではショルダー角75度までの症例にこの方法を適用し、おおよそ80%以上の症例に適用可能と書かれてありました。

 

 その考察から考えられた不適合発生比率が述べられており、ショルダー角80度の場合、計算上ではtan10°は0.18なので補填距離の18%の不適合が発生し、ショルダー角75度の場合、計算上ではtan15°は0.28で28%の不適合、填距離が100㎛であるとして18㎛、28㎛の不適合が発生する事になりますが、マージン付近100~200㎛は形成バーの形状から角度が変化して90度に近づいている場合が多く、適合は想像以上に良くなる事が多いとも述べられています。

 

 その内容を踏まえCADソフトによる解決法を医科歯科技研様で設定値としてまとめられた表1が記載されていましたのでご参考下さい。

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本来はCADソフト上では無く、スキャンデータを修正する事によって解決すべきものであるが、歯科用スキャナのSTLデータはCADソフトでは修正できない事から、試みられたのがSTLデータを直接修正出来るソフトウェアの利用で、藤原芳生社長は日本ユニシス社のPolygonal Meisterを利用し、良好な結果を得たとの事も論文に書かれてありました。

 

Polygonal Meisterは多様な機能の一つとしてスキャンデータを修正する事が出来る様で、スムーズな円形の穴をスキャンしても実際には図26左の様になる事が多いが、欠陥のある部分を領域指定し(図26中央)、円形の穴になるコマンドを実行すると。ポリゴンの欠損した部分を追加する事によって図26右の様に修正出来る機能です。図27ではABCDの欠損部にポリゴンを追加しているのが解ります。

この機能を基に日本ユニシス社が歯科用に「エッジ化」というコマンドを作成し、そのコマンドを実行したのが図28です。

上図が処理前、下図が処理後で、エッジ化により欠損したエッジが回復している事が解ります。右端下の拡大図を見ると、トリゴンの一辺が1本の線状に連なり、エッジ化がなされています。この様なポリゴンメッシュはスキャンしただけのデータでは見る事が出来ないもので、修正前後のポリゴン数を見ると、修正前は25,616個、修正後は26,252個で、エッジを捕捉するためにポリゴンを636個追加したという事で、この程度の増加ではコンピュータに負荷は掛からない。図29は処理前と処理後の画像を半透明にして重ね合わせたものです。

領域指定した範囲の周辺でポリゴンの直線部を延長した交点の位置(図11参照)にマージンを設定し、欠損したと思われる部分を追加修正しています。

 領域については、ラインの幅をエッジロスの周辺を含め350㎛とし、今回は位置をマニュアルで設定したが(図30)、自動マージン設定機能を利用して自動的に領域指定できる様、希望しているとの事です。

 その場合、図15で述べた理論を応用し、接線角度を45度に設定すればエッジロスで丸くなった部分の中心にマージンラインが描かれるはずであり(図31)、そのラインを中心として350㎛程度の範囲を領域指定すれば良い。現在Polygonal Meisterはエッジ化単機能版(商品名「エッジコレクトβ版」)として2020年に販売されています。

 

 この方法によるエッジロスの修正は、どの様なショルダー角度であっても修正可能であり、その角度が範囲によって違いがある場合でも領域指定を丁寧にすれば修正可能であり、そういう意味ではオフセット機能を利用した「CADソフトによる対応」よりも適用範囲は広く、確実で有意義であると述べておられます。

次回は歯科技工の特集『歯科技工所にIOSが必要な理由(ワケ)』について内容を述べたいと思います

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