top of page

​歯科技工士のための感染知識と対策例5
​~歯科技工士が特に注意すべき病原体 その1~

歯科技工士が特に注意すべき病原体

  歯科医療器期間では、治療器具は多種類わたり、その感染予防は複雑になっている。また、さまざまな病原体をもつ保菌者が訪れる。病院内の感染成立には「病原性のある微生物が存在する、感染経路がある、易感染性宿主がいる」の条件がそろっている。全ての微生物が院内感染の原因となりうるが、歯科技工士が特に注意すべき病原体をここで取り上げる。

​1)院内感染を起こす細菌とカンジタ

  病患者由来の病原菌のみならず、自然環境中でバイオフィルムを形成して口腔内、呼吸器、消化管、皮膚などに常在するものに加え、歯科技工物や水や床などにも感染源となる細菌やカビの仲間であるカンジタが存在する。

​①結核菌

  代表的な再興感染症であると共に世界の最重要感染症でもある結核症をおこすヒト型結核菌は、一旦感染すると排除されることはほとんどなく保菌者となる。我が国では、結果菌に感染している老人を中心にすでに4分の1の人が感染している。そして、保菌者で、免疫力の低下と同時に発病する人が増加している。また、病院内などでの結核菌の集団感染と発病が多発している。更に、アメリカを中心に、HIV保菌者やエイズ患者に対する抗結核剤の投与によって、薬剤が効かない多剤耐性結核菌(MDR-TB)の感染拡大がもたらされている。そのため、結核に対する薬物療法は、いままで以上に難しくなってきている。
 結核菌は、消毒薬に対しても抵抗性を発揮する。結核菌の保菌者は、結核を発病していなくても結核菌を口腔内に排出している。そのため、唾液や歯石などにも結核菌が見つかる。従って、歯科医療機関で感染するリスクが高く、歯科治療中のマスク、手袋の着用など不可欠になっている。歯科技工士に関しても、義歯や印象体に付着した結核菌の感染リスクは低くない。
 飛沫物質に付着した結核菌の感染予防には、修理義歯などの消毒、切削作業用のバキューム、遮蔽板の使用並びにマスクの着用が不可欠になる。
​ また、我が国では中高年女性を中心に、結核菌の仲間でいろんな環境に存在するMAC菌(Mycobacterium avium complex)による治療の極めて難しい肺炎が増えている。修理義歯や歯科技工製作物の消毒が不可欠になっている根拠もそこにある。

 

​表4 歯科医療機関で感染を起こしやすい微生物

  細 菌
     結核菌
     黄色ブドウ球菌
     化膿レンザサ球菌
     緑膿菌
     レジオネラ菌
     セラチア菌
 ウイルス
     B型肝炎ウイルス(HBV)
     C型肝炎ウイルス(HCV)
     ヒト免疫不全ウイルス(HIV)
 真 菌
     カンジタ・アルビカンス
 

出展:歯科技工士のための感染知識と対策例                                発行元:公益社団法人 日本歯科技工士会
bottom of page