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​歯科技工士のための感染知識と対策例6
​~歯科技工士が特に注意すべき病原体 その2~

​②ブドウ球菌

  ブドウ球菌は、鼻腔、皮膚、口腔、消化管などに広く分布する化膿性疾患の主な病原菌である。特に、病原性の強いものが黄色ブドウ球菌である。近年ほとんどの抗菌薬が効かない耐性菌であるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を中心としたブドウ球菌は、医療機関内にはびこって易感染症宿主などに重篤な感染症を引き起こしている。
 

​③化膿レンサ球菌

  レンサ球菌は種類も多く、人の口腔内ではさまざまなグループのレンサ球菌群が常在する。化膿レンサ球菌は、化膿性疾患を中心に、急性糸球体腎炎やリウマチ熱やその続発症を引き起こす。

​④緑膿菌

  日和見感染症や菌交代症、さらには院内感染の病原菌となる代表が緑膿菌である。緑膿菌は、菌体外にアルギネートを産生することによってバイオフィルムを形成し、免疫防御機能に抵抗するだけでなく、抗菌薬に抵抗性となり、難治療の慢性感染症を引き起こし、敗血症で死亡させることも少なくない。

​⑤レジオネラ球菌

  レジオネラ菌は、全米在郷退役軍人大会に集まった退役軍人200名にレジオネラ肺炎を発症させ、30名を死亡させた。レジオネラ菌は水中で増殖し、ほとんど濁ることなく、ぬるぬるとしたバイオフィルム集団となっており、長期間生存することができる。清掃手入れのされていないお風呂のぬるぬるの原因である。加湿器で増殖したレジオネラ菌が噴霧され、高齢者や新生児を死亡させた例もある。
 濡れたままのタオルや雑巾がぬるぬるになるのはレジオネラ菌などの増殖が原因である。歯科技工現場では、貯まり水を放置せず、清掃させて乾燥させるなどを行うことによってレジオネラ菌の増殖に注意を払う必要がある。

​⑥セラチア菌

  セラチア菌は、湿気がある不潔なところで増えて赤色の色素を出す小型の菌で、バイオフィルムを形成して院内感染病原体となり、呼吸器感染症、創傷感染、敗血症などを起こす。歯科技工現場では、レジオネラ菌同様にその増殖に注意が必要である。

​⑦カンジタ・アルビカンス

  カンジタ・アルビカンスは、高齢化などによる免疫防御機能の低下に伴って増殖し、舌背、口蓋などでバイオフィルムを集団になって増殖する代表的な日和見感染起因性真菌である。レジンへの付着能が強く、デンチャープラーク構成真菌であることは前途した通りである。また、抗菌薬の長期使用による菌交代現象として口腔内などで増加する。従って、修理義歯や印象採得には100%カンジタ・アルビカンスが付着していると考えておかなければならない。

出展:歯科技工士のための感染知識と対策例                                発行元:公益社団法人 日本歯科技工士会
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