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​歯科技工士のための感染知識と対策例4
​~感染症対策に必要な知識 その2~

感染症対策に必要な知識
2)院内感染と感染経路

  院内感染とは、「その医療機関で体内に浸入した細菌やウイルスなどによって起きる感染症」と定義される。病院内で起きることからhosital infection、あるいは病んだ集団(nosocomial)が感染することからnosocomial infection と呼ばれている。
 歯科技工物を介した感染も院内感染症として考えておかなければならない。歯科医療現場での感染の経路は、①患者から医療担当者へ ②医療担当者から患者へ ③医療を介し(歯科技工物を含む)患者から患者へ
 歯科医療現場「では、全ての場において血液や唾液などの体液を介した感染が起こりうる。歯科技工士も、歯科医師、歯科衛生士との連係して感染対策を講じなければならない。修理義歯、印象採得、印象硬化物さらには製作技工物のすべてが感染源になりうる。

​3)易感染性宿主と日和見感染症

  病院内では、感染症を起こす病原体が多いうえに、病気によって感染に対する抵抗力の低下した易感染性宿主(compromised host)が多いため、感染が発生しやすい状況にある。易感染性宿主について表3にまとめて示した。
 歯科医院で治療を受ける患者は高齢者が多く、全身性の基礎疾患がある易感染性宿主が多い。そのため、健康な人に常在するするような病原性の強くない微生物によっても感染症が起きてしまう。
 健常人に対しては通常病原性を発揮しない弱毒微生物が、易感染性宿主に病原性を示し、感染を引き起こさないことを日和見感染症(opportunistic infection)という。それらの原因微生物は、バイオフィルムとなったりして抗生物質や消毒剤に抵抗性があり、環境から完全に排除することが困難であることなどの共通した特徴がある。
​ そのため、修正義歯、製作技工物に付着した病原性の低い微生物の感染を防ぐ対策も適切に行わなければならない。

​表3 易感染性宿主

  1. 原発性免疫不全症(先天的な疾患)
    免疫不全症、白血球機能不全、補体の異常
 2. 続発性免疫不全症(生後に起きる)
    エイズ(HIV感染症)、悪性腫瘍
 3. 代謝異常患者
    糖尿病、腎透析を受けている患者、膠原病、肝硬変
 4. 医療行為を受けている
    手術後、留置カテーテルのある患者、火傷、抗がん剤治療を受けている患者
​ 5. 高齢者、新生児、強いストレスや精神的虚脱状態にある人

出展:歯科技工士のための感染知識と対策例                                発行元:公益社団法人 日本歯科技工士会
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