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歯科技工士のための感染知識と対策例7
~歯科技工士が特に注意すべき病原体 その3~
2)歯科医療機関で感染リスクの高いウイルス
歯科医療現場では、あらゆるウイルスの感染尾機械があるとして対応しなければならないが、歯科技工士への感染リスクの高いB型肝炎ウイルス(HBV及びC型肝炎ウイルス(HCV)について述べる。
(1)B型肝炎ウイルス(HBV)
B型肝炎売ウイルス(hepatitis B virus,HBV)は、直径42㎚の球状粒子(Dane粒子)、ウイルス粒子を包み込んでいる7㎚の薄いエンベロープとDNAを含む内部の芯(Core)である。Dane粒子、エンベロープおよびコアは、それぞれHBe抗原、HBs抗原、HBc抗原と呼ぶ(図6)。
HBe抗原を持つ保菌者は、B型肝炎ウイルスが肝臓細胞で作られている状態なので肝炎になりやすい歯、他人にも感染させやすい。
HBs抗原は、感染防御抗体産生を起こし、HBV感染予防ワクチン抗原となる。
日本人のHBV保菌者は、300万人と推定されている。HBVに感染した場合の感染経過を示す(図7)。免疫機能が弱い新生児や幼児はHBV感染があっても肝炎になることがほとんどないが、持続感染となり、無症状HBV保菌者となることが多い。免疫機能が十分に作動しないため肝炎を起こすことが少ない反面、HBVは体内から排除されないため保菌者になって、慢性感染、肝硬変、肝臓がんと進展することがある。
成人では、性交渉や医療事故によるHBV水平感染がみられる。保菌者になった場合でも、免疫防御機能が働いてウイルスが排除されてしまうこともある。一部の感染者は1〜6か月の潜伏期を経て急性肝炎となる。急性肝炎は、発熱や全身倦怠感などが2〜4週間続き、約2ヵ月で急性症状が無くなり治癒する。若い感染者では劇症肝炎に進展することがあり、その死亡率は約80%と極めて高い。
HBs抗体は感染防御抗体として働くため、HBV感染の機会があった場合に、48時間以内に抗HBsヒト免疫グロブリン(HBIG)の接種によって効果的に感染を予防することができる。
母親がHBV保菌者である媒位、垂直感染を防ぐ目的で、新生児にはHBs抗体を含むHBIGの投与やHBs感染予防ワクチン接種が行われている。
B型肝炎ウイルスに感染の機会の多い医療担当者には、その感染予防ワクチン接種が行われている。広く利用されているのは7,組換えDNA技術によって酵母に産生させたHBs抗原感染予防ワクチンである。
(2)C型肝炎ウイルス(HCV)
非AHB型肝炎ウイルスといわれた大部分がC肝炎ウイルスである。HCVは、コアタンパク質およびE1とE2のエンベロープタンパク質などから構成される(図8)。HCVにはエンベロープがあり、エンベロープの薄いB型肝炎ウイルスと違い消毒薬に対する感受性が高く、エタノールなどで不活化される。
日本人のC型肝炎ウイルス保菌者は、150万人〜200万人である。そのうち約60%が輸血、非加熱血液製剤、予防接種の際の同じ注射針の使い回しなどの医療行為によって日本での感染拡大のあったことが明確にされている。
C型肝炎ウイルスには複数の型があり、日本人のHCV保菌者では、1b型が約70%、2a型が約20%、2b型が約10%である。HCVに感染した場合の感染経過を示す(図10)。HCV感染後1〜3ヵ月の潜伏期を経て急性肝炎が発症する。一般に急性肝炎の症状は軽い。しかし、、急性肝炎の70〜80%が持続感染となり慢性肝炎となってtします。その後平均20年で肝硬変の成、さらに約10年を経て肝がんに進展する。
現在、C型肝炎ウイルス感染予防ワクチンの開発研究されているが、実用化には至っていない。
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