厚生労働省「令和2年衛生行政報告例」によると、約3万5000人の歯科技工士の方々が就労働いています。
しかし、その実態について、警鐘を鳴らす技工所経営者も多く「このままではなり手がいなくなる」と危機感を募らせいる。その理由として、虫歯の治療に欠かせない金属やセラミックなどの修復物の製造・加工を任される歯科技工士が過酷な労働環境に置かれており、「今、歯科技工士は5年で7割辞める」とも言われています。
労働環境も整備されておらず、報酬面にも格差問題があり、技術者のメイン世代は40代後半~60代。年々なり手が減少し、このままでは絶滅の危機と言わざるを得ない状況です。なぜ今、この業界の離職率が高いのか紐解いてみると。
離職率が高くなる原因
① そもそも、自費での歯科治療件数が少なく、保険治療の技工物作製が中心。
② 自費も保険も一つ一つがオーダーメイドになり、労働時間が長くなる傾向。
③ 保険治療の場合、材料以外の器材の持ち出しが多く、金属の詰物や被せ物1個当たり手にする収入が1500~3000円なのに対し、自費の場合は、セラミック1本当たり2万~5万円の収入と大きな開きがある。
④ 歯科技工学校では、国家試験対策を中心に授業が進むため、自費の技工物作製技術の習得に日々の業務を担いながら、時間と費用がさらに必要。
⑤ 現状、技工士割合は50歳以上が全体の50%を超え、65歳以上では14.3%を占めている。
⑥ 個人経営ラボ(全体の約80%)が多く、自費対応への設備投資が難しい。
⑦ 慢性的な技工士不足による悪循環からの脱却が困難。
以上の状況から、保険対応を中心にする歯科技工士を取り巻く環境は非常に厳しく、一握りの自費対応歯科技工士とその他多数の保険対応歯科技工士との格差が埋まら状況が続き、二極化は由々しき問題となっています。
歯科技工士を取り巻く環境について
また、どこの技工学校を見てもなり手が非常に少なく、全国規模での定員割れが深刻な問題へと発展しており、卒業生が1ケタの学校も普通にあるそうです。最近では、技工学校の定員数撤廃を求める声も出てきています。歯科技工士は本来とても魅力的な職業です。お口の中に装着された技工物は、見た目はもちろんのこと、咀嚼(そしゃく)機能や発語など、QOL(生活の質)の維持・向上になくてはならない技術です。オーダーメードで“人工臓器”を作ることの技術的価値と重要性に光を当てていただきたいです。それには、国家レベルで待遇を改善するための予算を組んでいただく必要があります。
是非、歯科技工士の価値をいまいちど見直してほしいと声高に訴える技工所経営者も少なくありません。歯科医療は他の医療に比べると、重要視されていませんでしたが、現在、口腔機能の低下により精神的・身体的機能の低下を招く等のさまざまなリスクが増加することも推察されています。
どうか、口腔医療に関わる全ての方々に適切な環境を整えていただきたい。弊社も少なからず材料の側面から歯科技工士をはじめとした、口腔医療に関わる全ての方々のお力になれるよう精進を続けたいと思います。