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歯科技工術論文のご紹介11

今回は、歯科用ジルコニアの高速焼成(スピードシンタリング)による機械的性能への影響について研究報告されている文献をご紹介たします。メーカーの推奨エビデンスがあれば、担保になる部分もあるかと思われますが、製造するうえでご参考ください。

Speesintering and the mechanical properties of
3-5mol% Y2O3-stabilized zirconias
​3-5mol%Y2O3安定化ジルコニアの高速焼成と機械的特性について

要 約
 オールセラミック修復物の製造におけるよりスピードワークフローは、経済的にも高い関心を集めています。この目的のため、現代の焼結炉で使用するための焼結プロトコルが最適化され、いわゆる「高速焼結」が開発されました。しかし、従来型の焼結炉は、ジルコニア修復物の焼結に最も広く使用されている設備です。本in vitro研究では、従来の焼結炉を用いた高速焼結プロトコルの可能性を評価するため、3mol%から5.4mol%のY2O3で安定化された異なる歯科用ジルコニアを、従来の焼結プログラムと比較して焼結しました。評価した物性は、ヤング率、ポアソン比、密度、二軸曲げ強度、および破壊靭性です。本研究では、材料に依存する違いはあるものの、高速焼結によるジルコニアの物理的・機械的特性は、従来の焼結法で得られたものと同等であることが示されました。
キーワード:曲げ強度 · イットリア安定化正方晶ジルコニア · 機械的特性試験

はじめに
 従来の焼結ジルコニア3mol% Y2O3で安定化されたジルコニア(3YSZ)の臨床的成功は、ガラスセラミックスと比較して破折率が低いという臨床的証拠から明らかです[1, 2]。3YSZの優れた臨床性能は、局所的な応力下で単斜晶(m)相へ容易に変換可能な正方晶(t)相の高含有量により誘導される高い破壊靱性に起因するとされています[3]。この変態は、亀裂の伝播に先立って体積膨張を引き起こします[4]。現在、安定化剤の含有量を減らし正方晶(t)相の量を減らし、更に透過性の高いジルコニア(例えば4YSZと5YSZ)が、特に単一構造体(モノリシック)において臨床応用が拡大しています。これは、べニアジルコニアシステムにおける既知のチッピング(欠け)の問題[5,6]がきっかけとなりました。

 本来、歯科用YZSセラミックスは、焼結による密度向上と粒成長を目的として、加熱から約1500℃まで6~8時間かけて昇温し、通常2時間の係留時間と比較的緩やかな降温段階を含むプロセスで焼結されます。このような長時間の焼結プログラムは、炭化ケイ素(SiC、最高約1625℃)や二ケイ化モリブデン(MoSr2、最高約1850℃)などのセラミック導電線による抵抗加熱によって熱を生成する管状加熱素子を使用した従来の炉で実施されています。この熱生成方式は、誘導加熱を採用した最新世代の焼結炉で使用される技術と比べて遅いです。誘導加熱は、交流電流で誘導された電磁場が銅コイルに作用し、材料内に渦電流を生じさせ、ジュール熱により加熱する仕組みです。誘導炉はより効率的で、高い加熱速度で運転可能であり、最近、歯科用ジルコニアセラミクの焼結を目的として歯科市場に導入され、歯科ラボのワークフローを最適化し、ジルコニアをチェアサイド応用にも使用可能にしました。誘導炉を用いた歯科用ジルコニアの焼結において、いわゆる「高速焼結(スピードシンタリング)」と「超高速焼結(スーパースピードシンタリング)」は、実験的証拠が限定的であるにもかかわらず、最も注目されるアプローチとなりました。初期の評価では、急速加熱と短い保持時間を特徴とするこれらのプロトコルが、密度、透過性、機械的特性にほとんど悪影響を及ぼさずに歯科用ジルコニアの焼結に安全に適用可能であることが示唆されています[7, 8]。高速焼結されたジルコニアの機械的安定性は、破壊荷重実験や標準化された強度試験において検討されてきました[9–12]。

 しかし、強度よりも重要な破壊靱性に関する特性は、高速焼結の文脈ではまだ検討されていません。誘導炉は歯科用ジルコニアの焼結技術において最先端の技術ですが、多額の投資を要するため、現在広く普及しているわけではありません。そのため、従来の炉の使用が依然として標準的な実践となっています。本研究の目的は、従来型炉を用いた高速焼結プログラムの物理的・機械的特性(ヤング率、二軸曲げ強度、破壊靱性を含む)に関する実現可能性を評価することでした。

材料と方法
 材料

 本研究で評価する材料は、Y2O3による安定化度合いに基づいて選定し、従来型ジルコニアおよび透光性ジルコニアのY2O3含有量の範囲(3mol%、4mol%、または5mol%)を網羅するように、各メーカーから2種類の材料を選定した。表1は、各材料のブランド名、メーカー、バッチ、X線蛍光分光法によるY2O3の定量、および2つの正方晶相の存在を考慮したX線回折法とリートベルト解析による相含有量の算出結果をまとめたものである[13]。リートベルト解析におけるフィッティングに立方晶相構造を用いる理由は、XRDが陰イオンサブラティスの摂動に対して感度が低いためである。この感度が低いため、透過型電子顕微鏡による選択視野回折において、Y2O3組成が8mol%未満では禁制ピークであるにもかかわらず、立方晶様ピークが出現します[14–17]。このことは<111>晶帯軸に沿った{112}型反射が透過型電子顕微鏡で観察されました[14,15]。
 ここでは、代替焼結プログラム「スピード焼結」が評価され、参考文献で報告されている物理的および機械的特性の観点から「従来の焼結」プログラムと比較されました[13, 18]。焼結は、加熱と冷却曲線を柔軟にプログラミングが可能なボトムリフトオーブン(Vita Zircomat 6000 M Speed、Vita Zahnfabrik)で行われました。従来の焼結のパラメータは、材料やメーカーによってわずかに異なるメーカーの推奨に従って厳密に維持されていました。最大焼結温度は1500℃から1600℃の間で変化し、係留時間は120〜145分、その後オーブン内で一晩中ゆっくりと降温が行われました。ほとんどの材料の使用説明書には、従来の焼結プログラムの代替案が記載されていなかったため、電気抵抗加熱素子を使用した一般的な焼結炉で適用可能な汎用的高速焼結プログラムを考案しました(表1および図1を参照)。このプログラムにはCercon材料の取扱説明書に記載されている利用可能な高速焼結プログラムの詳細に基づき作成されました。これは、17℃/minの昇温、1540℃で35分の係留時間、1200℃まで18℃/minの放冷速度、その後35℃/minの降温速度で構成されました。

7-1.png

 表1 本研究で分析した市場流通材料の 指定安定剤含有量、メーカー、バッチ、ピーク温度、および従来型および高速焼結プログラムの係留時間と相分率。

機械的特性評価
 焼結サンプルのヤング率E及びポアソン比νは、以前の研究[19]で説明されているように、共鳴超音波分光法(RUS)を用いて測定しました。嵩密度ρは幾何学的に決定されました。以前に測定された高い再現性[19]に基づき、各測定には材料ごとに1つの試料を使用し、各試料につき3回の繰り返し測定が行われました。

二軸曲げ強度の測定
 サンプル受領時の半焼結体ブロック(IPS e.max® MO B40Lブロックのみを使用)を、バンドソーで小さな長方形片に切断し、さらに自動鋸とダイヤモンドコーティング銅ディスクを用いて水スプレー下で20%のオーバーサイズに更に切断しました。各材料について、焼結後の厚さt = 1.2 mmの12×12 mm2のサイズになるように切断し、その後二軸曲げ試験を実施しました。曲げ試験に供する試料の表面は、切断時の粉塵を除去するために水スプレーで洗浄する以外の処理は行われず、焼結後の表面処理も施されませんでした。
 二軸曲げ強度を測定するために、Ball-on-Three Balls(B3B)試験配置が使用されました。
この方法はもともとディスク形状用に設計されましたが[20]、後に長方形プレートにも適応され、広範囲な検証が行われました[21,22]。

​図 1

         従来プログラム(赤)と一般的な高速焼結プログラム(青)の例

 試験中、破壊時に試料の引張側に発生する最大主応力が破壊強度として次のように計算されます。

 

 


tは試料の厚さ、Fmaxは破壊時の最大力、δは有限要素解析を用いて導出された関数で、2つの独立変数によって決定されます。

 

 

 

 

 

ここで支持半径Ra = (2√3Rb)/3は、Rb = 4mmの3つの支持球によって形成され、νは試料のポアソン比です。各グループ分けのために少なくとも30個の試料が準備され、EN DIN 843–5規格[23]に従ってワイブル統計法を用いて統計的に処理され、ワイブル尺度(σ0)および形状(m)パラメータに関して評価されました。グループは、90%信頼区間が重なり合ったため、統計的に異なるとみなされました。

破壊靭性の測定
 破壊靭性の測定は、ASTM C 1421で標準化された「構成A」に従ってシェブロンノッチビーム(CNB)法を用いて行われ、断面の高さW×幅Bは4mm×3mm(ISO 24370およびEN 14425-3でも標準化された形状)であり、ビーム長さLは25mmとし、外側スパン20mm、内側スパン10mmの4点曲げ試験で測定されました。これには製造元から供給されて部分焼結材料のブロック(IPS e.max® CAD MO B 40 Lブロック用)が使用されました。ビームは、自動切断鋸(Bühler 5000)とダイヤモンドコーティング銅ディスクを使用して、水潤滑下で部分焼成ブロックから切断され、線収縮率約20%を考慮して過大寸法に切断されました。ビームの中央部に設けられたノッチは、前述の規格で推奨されているノッチ寸法比に従い、ホワイトボディ段階(焼成前ブロック)を厚さ0.15mmの回転ダイヤモンドディスクを使用して切断製造されました。無効な試験の発生可能性を考慮して、各実験グループの材料ごとに最大12個の試料が作製されました。

 ノッチ付き試料は、ジルコニアボールが入った焼成トレーにノッチ先端を上に向けて配置しグループごとにすべての試料を同じサイクルで焼結しました。わずかな焼結変形が生じた場合、試料を水噴射下の切削板で平面平行に調整されました。最終試料の側面のノッチ寸法は、デジタルカメラと付属のソフトウェアを組み合わせた実体顕微鏡で測定されました。試験前に、試料はオーブン(150℃)で3時間乾燥させて、その後シリコンオイルバスに浸漬しました。これは、試験中に三角ノッチの先端で発生する飛び出すクラック(ひび割れ)において、水による応力腐食亀裂伸展を防ぐことを目的としており、得られたKlc値に影響を与える可能性を排除するためです[24]。シリコンオイルでコーティングされた試料は、専用試験治具[25]を用いて0.005mm/sの破壊速度(亀裂を誘発するため)で試験されました (図2参照)。
荷重線変位は、画像デジタル相関法に基づく画像システム(LaserXtens、Zwick / Roell)によって制御され不安定化前のノッチ先端での安定した亀裂伸展を正確に検出しました。KIcは、破壊時の最大荷重Fmax [26]から算出されました

ここで、S0は、外側スパンの長さS1は内側のスパンの長さであり構成Aの4点曲げ試験では、

 

ここで、l0はビームの下端とシェブロンノッチの先端との距離、l1は、ビームの両側にあるノッチセグメントの算出平均です。

 構成Aにおいて、l0/Wとl1/Wの比率は誤差を最大1%に抑えるため0.175<l0/W<0.225および0.95<l1/W<1の範囲内に保たれました。l0は、デジタルカメラと付属のソフトウェアを組み合わせた実体顕微鏡で破壊後に測定されました。荷重変形曲線が前述の規格に示されている曲線より逸脱する試料(不安定性の前に安定した亀裂伝播がない)は無効な試験とみなされ、分析に含まれませんでした。前述の規格では、評価に十分な試料数として5個を有効な試料と定義しています。各材料について9〜10個の有効試料を得ることができました。当社のCNB試験手順は、最新の標準参照材料を使用して検証されました。
 同一材料内の2つの焼結プログラム間の比較には、複数の無相関スチューデントt検定が実施されました。同一焼結プログラム内の材料の中で、ANOVA分散分析とそれに続くTukeyの事後テストを実施し、有意水準 α = 0.05と定義しました。

結果
 破壊靭性の測定は、ASTM C 1421で標準化された「構成A」に従ってシェブロンノッチビーム(CNB)法を用いて行われ、断面の高さW×幅Bは4mm×3mm(ISO 24370およびEN 14425-3でも標準化された形状)であり、ビーム長さLは25mmとし、外側スパン20mm、内側スパン10mmの4点曲げ試験で測定されました。これには製造元から供給されて部分焼結材料のブロック(IPS e.max® CAD MO B 40 Lブロック用)が使用されました。ビームは、自動切断鋸(Bühler 5000)とダイヤモンドコーティング銅ディスクを使用して、水潤滑下で部分焼成ブロックから切断され、線収縮率約20%を考慮して過大寸法に切断されました。ビームの中央部に設けられたノッチは、前述の規格で推奨されているノッチ寸法比に従い、ホワイトボディ段階(焼成前ブロック)を厚さ0.15mmの回転ダイヤモンドディスクを使用して切断製造されました。無効な試験の発生可能性を考慮して、各実験グループの材料ごとに最大12個の試料が作製されました。

 ノッチ付き試料は、ジルコニアボールが入った焼成トレーにノッチ先端を上に向けて配置しグループごとにすべての試料を同じサイクルで焼結しました。わずかな焼結変形が生じた場合、試料を水噴射下の切削板で平面平行に調整されました。最終試料の側面のノッチ寸法は、デジタルカメラと付属のソフトウェアを組み合わせた実体顕微鏡で測定されました。試験前に、試料はオーブン(150℃)で3時間乾燥させて、その後シリコンオイルバスに浸漬しました。これは、試験中に三角ノッチの先端で発生する飛び出すクラック(ひび割れ)において、水による応力腐食亀裂伸展を防ぐことを目的としており、得られたKlc値に影響を与える可能性を排除するためです[24]。シリコンオイルでコーティングされた試料は、専用試験治具[25]を用いて0.005mm/sの破壊速度(亀裂を誘発するため)で試験されました (図2参照)。
荷重線変位は、画像デジタル相関法に基づく画像システム(LaserXtens、Zwick / Roell)によって制御され不安定化前のノッチ先端での安定した亀裂伸展を正確に検出しました。KIcは、破壊時の最大荷重Fmax [26]から算出されました。

​図 2

(a)4点曲げ試験に使用される特殊な多関節治具

 

(b)試料のたわみと破壊前の未臨界亀裂伸展の有無を追跡するためのスペックル画像相関用レーザーユニット

 表2 共鳴超音波分光法によるヤング率E、ポアソン比ν、密度ρの測定結果

表3 二軸曲げ強度(ワイブル係数mと特性強度σ0、90%信頼区間は対応)、破壊靭性KIc(標準偏差)の機械試験結果

​図 3

2つの焼結プログラムにおける特性強度(90%信頼区間)と破壊靭性(S.D.)のプロット

アスタリスク部分は、グループ内で有意差があることを示す。

議論 

 強度データの統計的処理に関して、mは、試料の有効表面積/体積における破壊を引き起こす臨界欠陥サイズの分布を表すもので、試料サイズと荷重構成に依存します。焼結の観点からみると、mの顕著な変化は、ホワイトボディの緻密化における異なる動的挙動を示唆しており、これは加熱速度が非常に類似していた場合の熱分布ではなく保持時間に起因するものです。BelliとLohbauer [18] は、歯科用ジルコニアにおいて、完全焼結体における欠陥分布はホワイトボディの欠陥分布から継承されることを明確に示しました。焼結類似物に継承されたホワイトボディにおける臨界欠陥の形態は、加圧時に密着に達しなかった球状噴霧乾燥顆粒の接合頂点として構成されています。一軸圧縮時に、外側の硬いバインダーが頂点に閉じ込められ、多面体形状を取ることで、さらに圧縮が阻害されると推測されています[28]。

粒子が質量中心に向かって収縮する際にバインダーが燃焼し、接合部に質量輸送で埋められない空隙が生じます[29]。このような欠陥の形態は、張力の方向に対して常に不利な向きを示し「スパイク」を伴う三次元「クロウフット」を有する三次元構造です。パラメータmは、Cercon ht、Prettau、およびIPS e.max ZirCAD MTの3つの材料で大幅に減少した一方、Lava Estheticでは増加しました。高速焼結試料では、IPS e.max ZirCAD MTを除き、すべての材料でワイブル係数が7~13の範囲にあり、従来の焼結条件下(mが6~19の範囲)よりも変動が小さいことが示されました。

焼結方法が焼結欠陥の発生メカニズムに影響を与えるもう一つの兆候は、σ0の変化でした。σ0は、臨界欠陥のサイズ規模を反映する63.2%の破壊確率における強度を表します。Prettau、Prettau Anterior、Cercon xtではσ0が有意に減少しましたが、IPS e.max ZirCAD MTでは逆の効果が観察されました。σ0の減少は、係留時間を35分~2時間に延長した場合と比較して、欠陥がより大きくなった可能性を示唆しています。おそらく、係留時間の延長は、特に欠陥の端部において圧縮された粒子の表面がより密着する部位において、ホワイトボディ内の既存空孔が焼結によって拡張・閉塞を促進する可能性があります。ただし、この効果は系統的ではなく安定剤含有量にも依存するものではなく、むしろ材料に依存性が高いようです。高速焼結に関しては、文献と比較は必ずしも単純ではありません。なぜなら、時間、温度、炉、加熱原理(例:誘導、プラズマ、マイクロ波など)は各研究で異なるためです。それでも、いくつかのパターンが認められます。具体的には、ほとんどの強度試験では、従来の焼結との間で有意な差は報告されていません[7, 8, 11, 30, 31]。ただし、一部の研究ではわずかな改善が報告されています[32]。Kaizerら[33]は、高速焼結と超高速焼結では、従来の焼結と比較して、接触滑り摩耗時の孔食(局部腐食)の発生量が増加することを示し、緻密化の問題が生じることを指摘しています。他の研究では、高速焼結が粒度分布の変化を引き起こし、具体的には、高速焼結により細粒の割合が増加し、中粒の割合が減少します[7,8]。相分率の観点からみると、焼結プロトコルが正方晶と立方晶の粒子割合に変化を引き起こすようですが、この現象は特定のパターンに従うのではなく、材料に依存があるようです[7, 8]。

 微細構造的特性、特に粒径は、安定化剤の粒内分布に影響を与えことが示されており、その結果、正方晶から単斜晶への変異を決定することが示されている。この変異特性は、イットリア安定化ジルコニアの靭性向上に最大の効果をもたらすことが知られています[3]。実際、2 mol% Y2O3で安定化されたジルコニアを、従来法で焼結した試料サンプルを用いて、KIcとt相の体積含有量との間にべき乗則関係が確立されました[13]。これにより、KIcとイットリア含有量の間に逆べき乗則関係、KIc(xY2O3) = KI0 e−λx + KIc,cubic、λ = -1.102 mol%−1、を導かれ、Lange [34]の古典的な関係式に疑問を投げかけ、むしろMasaki [35]が示した傾向に一致する結果となりました。高速焼結ではこの関係は崩れず、破壊靭性に影響を及ぼす主要因である粒径分布とt相含有量は、焼成時間短縮(係留時間短縮)に伴いほぼ維持されていることを示唆しています。ただし、2つの例外があります。製造元のDentsply-Sirona社のCercon htとCercon xtの破壊靭性だけが、高速焼結によってそれぞれ10%と16%と顕著な減少を唯一示した例です。興味深いことに、ここで使用した高速焼結プログラムは、Dentsply-Sirona社が推奨する加熱速度、最高温度、および係留時間と完全に一致していました。ただし、両製品とも、従来型焼結プログラムではすべての製品の中で最も長い係留時間を有しており、これが従来の焼結試料のKIc値の増加に寄与した可能性があります。同じ組成の材料を有する製品(Lava PlusおよびPrettau。IPS e.max ZirCAD MOはAl2O3が0.3 mol%で、他のすべての材料よりも優位に高い)と比較すると、Cercon htは従来法焼結で最も高いKIc値を示し、高速焼結後にKIc値が低下するにもかかわらず、統計的にはLava Plusと同等の値を示し類似していました。Cercon xtのKIc値はPrettau Anteriorよりも統計的に低い値を示したものの、Katana STMLと統計的に同等の値を示しました。

 

 この観点から、両材料の高速焼結後のKIc値の低下は比較可能な組成の他の材料の範囲内にあるため、相対化される可能性があります。従来焼結と高速焼結のプロトコルの比較は、電気抵抗加熱素子を使用した同一の炉で実施されましたが、今回の研究では、誘導加熱炉の使用を評価することで、将来の研究によって補完することが可能性です。さらに、文献[13]および[18]に示されているように、強度と破壊靭性の値は歯科用ジルコニアの相組成の指標となり得るが、従来の焼結プログラムと比較した高速焼結のより具体的な影響に関するさらなる知見を得るためには、走査電子顕微鏡(SEM)、X線回析(XRD)を用いて微細構造パラメータ(粒径と分布)および相含有量のさらなる評価分析が必要で望ましいと考えられます。

結論

 本研究の結果から、従来の炉で高速焼結プロトコルを使用して歯科ジルコニア(3-5YSZ)を焼結することは、その機械的特性を大幅に損なうことはなく、より長く、よりエネルギーを消費する従来の焼結プロトコルを損なうことなく、安全に採用できると結論付けると考えます。

Speesintering and the mechanical properties of
3-5mol% Y2O3-stabilized zirconias​
3-5mol%Y2O3安定化ジルコニアの高速焼成と機械的特性について
​出展元 Odontology(2023)111:883ー890
http://doi.org/10.1007/s10266ー023ー00796ーy

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