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​次世代の技工法について

 内閣府の調べによると、我が国の総人口は、令和3年10月1日現在、1億2,550万人となっており、65歳以上人口は、3,621万人となり、総人口に占める割合(高齢化率)も28.9%となっているそうです。

​ 今後の超高齢化時代を見据え、私たち歯科材料メーカはどのように、お口の健康維持の下支えができるのか?今回は、将来の歯科技工士不足に備え、技工士の皆様が効率的に技工物が作製できる環境のために必要な次世代の歯科技工法について調査し、次世代金属研磨方法についてご紹介いたします。

​その1 プラズマ電解研磨

 プラズマ電解研磨は、金属試料を電解液中に浸し、プラズマ発生用の電圧をかける方法です。このプロセスによって金属表面が化学的に変性され、微細な凹凸や不均一性が取り除かれます。プラズマは高エネルギーな状態であるため、効率的な研磨が可能です。しかし、電解液中の化学反応により表面に不均一なエッチングが生じる場合があるため、制御が難しい側面があります。

その2 高分子電解質を用いた電解援用研磨

 この方法は、電解液中に高分子電解質を添加して金属試料を研磨します。高分子電解質は化学的な効果を持ち、表面研磨を強化します。そのため、研磨後の表面に均一な仕上がりが得られます。ただし、高分子電解質の添加により電解液の組成が複雑化し、制御が難しくなる可能性があります。

​その3 プラズマ電解研磨と高分子電解質を用いた電解援用研磨の併用

 通常この研磨方法では、プラズマ研磨後に高分子研磨を行います。このプロセスでは、まずプラズマ電解研磨によって金属表面を前処理し、表面の不均一性や微細な凹凸を除去します。その後、高分子電解質を含んだ電解液を使用して、金属試料をさらに研磨し、表面の均一性を向上させます。このようにして、プラズマ研磨と高分子研磨を組み合わせることで、より効率的で均一な表面仕上げが実現されます。

研磨3.jpg

各研磨方法のメリットとデメリットは、なに?

プラズマ電解研磨

 

メリット:
 ‣高エネルギーなプラズマにより、表面の微細な凹凸や不均一性が取り除かれる。


 ‣研磨時間が比較的短く、効率的な研磨が可能。

デメリット:
 
電解液中の化学反応により、表面に不均一なエッチングが生じる場合がある。


 ‣電解液の成分やプラズマの制御が難しい場合がある。

 

高分子電解質を用いた電解援用研磨

メリット:

 ‣高分子電解質の化学的な効果により、表面研磨が強化される。


 ‣研磨後の表面に均一な仕上がりが得られる。
 

デメリット:​
 ‣高分子電解質の添加により、電解液の組成が複雑化し、制御が難しくなる場合がある。


 ‣高分子電解質の適切な選択が必要であり、不適切な場合には研磨効果が低下する可能性が

  ある。
 

プラズマ電解研磨と高分子電解質を用いた電解援用研磨の併用


リット:
 ‣高エネルギーなプラズマと高分子電解質の両方の効果により、効率的かつ均一な研磨が実現

  される。


 ‣表面の微細な凹凸や不均一性が効果的に取り除かれる。


デメリット:
 ‣
高分子電解質の適切な添加量や電解液の組成、プラズマの制御が難しく、最適な条件の設定が

  必要となる。


 ‣高分子電解質の添加により、電解液の浸透性や電気伝導性が低下し、研磨効果が損なわれる可

  能性がある。

​各研磨方法の効率とコストは?

プラズマ電解研磨

 

コスト: プラズマ電解研磨には高度な設備と専門知識が必要であり、導入コストが高い場合があります。また、設備のメンテナンスや消耗品のコストも考慮する必要があります。


効 率: プラズマ電解研磨は比較的高い効率で作業を行うことができます。短時間で表面を均一に研磨し、高品質な仕上がりが期待されます。

 

高分子電解質を用いた電解援用研磨

コスト: 高分子電解質を使用した電解援用研磨は、プラズマ電解研磨に比べて導入コストが低い場合があります。しかし、適切な電解液や装置の準備にはコストがかかることがあります。


効 率: 高分子電解質を使用した電解援用研磨は、比較的効率的な方法であり、プラズマ研磨に比べて作業時間が短縮される場合があります。

プラズマ電解研磨と高分子電解質を用いた電解援用研磨の併用

 

コスト: 両方の研磨方法を併用する場合、導入コストが増加する可能性があります。プラズマ電解研磨と高分子電解質を使用した電解援用研磨を組み合わせることで、効率上がり結果的にコスト削減になる可能性があります。


効 率: 両方の研磨方法を組み合わせることで、より効率的な研磨が可能になります。プラズマ研磨によって表面を均一に前処理研磨し、その後に高分子電解質を使用した電解援用研磨で微細な仕上げを行うことで、高品質な仕上がりが期待されます。

​ちょっと先の未来は?

​ ラズマ電解研磨の発展により、歯科材料の表面処理技術は前進し、処理時間の短縮や品質の向上が期待されます。特に、プラズマの制御や反応条件の最適化により、微細な表面特性が改善され、生体適合性が高まる可能性があります。一方、高分子電解質を用いた電解援用研磨では、新しい電解質の開発や反応条件の最適化により、処理効率と表面仕上げの品質が向上する見込みです。これらの技術の組み合わせによる研磨方法は、処理効率と品質の両方を向上させる可能性があります。例えば、プラズマ電解研磨によって初期の表面改質を行い、その後高分子電解質を使用して微細な仕上げを施すことで、より滑らかで生体適合性の高い表面を実現できるでしょう。

 これらの進展は、歯科業界においては、歯科インプラントや補綴物などの材料の表面処理において新たな選択肢を提供し、より耐久性の高い、バイオコンパチブルな治療法の実現に貢献するでしょう。さらに、他の産業分野でも、金属部品やデバイスの表面処理において効率的で高品質な方法として採用される可能性があります。結果として、医療および産業の両方での応用範囲が拡大し、より効率的かつ持続可能な製品が開発されることが期待されます。

 また、これらの研磨方法は従来の研磨方法よりも環境

に与える影響が比較的少ないと考えられます。プラズマ

電解研磨では、化学的反応を利用して表面を処理するた

め、従来の機械的な研磨方法よりも溶剤や化学薬品の使

用が少なくなります。また、高分子電解質を使用した電

解援用研磨も、比較的低い電流と電圧を使用して行われ

るため、電力消費が抑えられ、環境負荷が軽減される可

能性があります。さらに、これらの研磨方法は通常、再生可能な材料やリサイクル可能な材料を使用することができるため、廃棄物の削減にも寄与します。これにより、総じて、持続可能な製造プロセスの推進に貢献する可能性があります。

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