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「フルデジタルワークフローでの新規部分床義歯製作方法の開発」
―デジタル技術を用いた新しい部分入れ歯の製作方法―

 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科口腔デジタルプロセス学分野の 金澤学 教授とキャノン電子株式会社の共同研究グループが開発した、世界初のデジタル技術を用いた部分床義歯製造方法を今回はご紹介いたします。

論文情報

 

掲載紙:Journal of prosthodontic research

論文タイトル:" Fabrication of milled removable partial dentures using a custom plate with

prefabricated artificial teeth

 

DOI:https://doi.org/10.2186/jpr.JPR_D_22_00100

出展元:東京医科歯科大学 プレスリリース「フルデジタルワークフローでの新規部分床義歯製作方法の開発」

​    金澤 学 教授

 近年、デジタル技術の進歩によりデジタル部分床義歯の製作方法に関する研究が多く報告されていますが、現在のデジタル部分床義歯は、切削加工や積層造形(3Dプリンター等)にて製作した義歯床とメタルクラスプおよび既成人工歯をそれぞれに接着する方法で製作されてきました、この方法では、人工歯とメタルクラスプの位置精度が良くなく、また義歯床メタルクラスプの接着力が弱く、不具合が生じることが多く報告されていました。しかし、これまでの研究で培ってこられた「デジタル全部床義歯製作における義歯床と人工歯の接着に対する問題を解決するために開発されたカスタムディスク法」を部分床義歯製作にも応用することで、フルデジタル部分床義歯の製作に成功されたました。

開発された部分床義歯の製作方法について

 一歯中間欠損症例に対する部分床義歯を対象とし、患者様の義歯をCADソフト上で設計(両隣在歯にそれぞれに

  エーカースクラスプ設置し、それらが補強線と一塊構造となったレジン部分床義歯とした)し、そのデザインに対

  応したカスタムプレートを設計する。

 デザインした義歯データをもとに、レジン床部のデザイン、クラスプ、カスタムプレートはデータを作成し、レー

  ザー積層造形法と3Dプリンターを用いて製作する。

 カスタムプレート内へ既成人工歯とクラスプを固定後、義歯床用常温重合レジンを流し込み、重合させた後、切削

  加工し研磨を行い義歯を完成する。

デジタル部分床義歯202308画像.png

​東京医科歯科大学 プレスリリースより引用

フルデジタル義歯がもたらす恩恵

 

従来、部分入れ歯の製作において、フレームワークとなる金属は歯科技工士の手によっ て鋳造、研磨されて作られてきましたが、3Dプリンターを利用して金属のフレームワークを製作することで、その煩雑な作業を削減することができ、またミリングマシンで一度に切削加工することで、時間も短縮することが可能となります。

 

また、入れ歯の設計においても、従来は、石膏模型上で手作業で行われていたものが、パソコン上で設計することで、材料の無駄を削減することが可能となります。

 

この新しい方法の最大の特徴点は、重合後に入れ歯を削りだしているため、その収縮によって起きる 形態の変化などの影響を受けず、より精度よく入れ歯を製作することが可能となります。

 

今回のデジタル技術の開発により、難しいとされていた部分床義歯のデジタル化が普及することにより、短時間で精度の良い入れ歯を作れるようになり、患者様へより良 いものを提供できるようになるだけでなく、歯科医師‧歯科技工士の労働環境の改善にもつながり、意義深いことです。

「アナログ」と「デジタル」と言う言葉が、対義語ように使われていますが、決してアナログ原理・原則を蔑ろにするのではなく、アナログの基礎に基づいて、デジタルの力を借りて効率的に且つ簡便に質の高い歯科医療を提供することで患者様・歯科医師・技工士にとって喜びになる未来もすぐそこに!

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