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​デンチャーのデジタル化について

 超高齢社会を迎え高齢者歯科医療と共に在宅・訪問介護の歯科医療も増加傾向になって来
ているようである。歯科医療ニーズの動向によると、在宅歯科医療の摂食嚥下といった高
齢者歯科医療の充実が求められ、義歯の質的需要が高度化して来ています。また、歯科医
療現場も高度に発達した歯科医療技術の進歩により、歯が喪失した無歯顎者の疾病構造も
著しく変化してきていると思われます。義歯製作もより簡便で、客観的な根拠から効率的
な“二義的人工臓器義歯“の製作システムと供給体制が求められています。
今回はデジタルデンチャーについて考察したいと思います。

「デジタルデンチャーとは」
 デジタルデンチャーは、クラウンやブリッジに比べて実用化が遅れているますが、臨床応用されればデジタルの恩恵が大きい領域です。その理由として、歯冠系に比べて完成するまでに多くの技工工程とそれに伴う大量の材料を消費することと義歯のクオリティーが歯科医師と歯科技工士の技量に大きく依存することが挙げられます。デジタル技術を応用することにより、技工操作の単純化(経費削減)と義歯製作の標準化が可能となります。部分 床義歯については、構成要素の中に材質が異なる金属 (クラスプやフレームワーク)とレジン(義歯床や人工 歯)が混在し形態も複雑で、義歯床にフレームワークを 内包する構造であるため、CAD/CAM システムにより製作することは困難です。現在は、フレームワークやクラスプを切削加工や積層造形によって製作が試みられ ていますが、世界的にみても実用化には至っていなません。 一方、全部床義歯については、海外ですでに商業ベー スのシステムが稼働しており、代表的なものをあげると、DENCA (三井化学)と Ava-Dent(米国)のシステムで、両社とも診療回数を少なくする目的で、印象採得と伵合採得を同時に行うためトレーに独自の工夫を凝らしていまスす。 製作方法は、最初はレジンプレートから削り出すミリング加工を採用していましたが、最近では3Dプリンターでの製作も試みられているます。また、IOS の口腔内データから、全部床義歯を完成させる システムを報告しており、近い将来、全部床義歯のフルデジタル化の可能性を示唆していると思われます。
「歯科技工士の新たな道」 
デジタルソリューションは、歯科医師ばかりでなく歯 科技工士にも大きな福音になろうとしています。現在の就 業歯科技工士の総数は、3 万 5 千人前後であるが、その 年齢構成をみると、50 歳以上が半数(47.9%)近くを占 めており、30 歳未満は 1 割程度(11.7%)に過ぎません。5 年後には、約 6 千人が減少することが予想されており、歯科技工士不足の問題はきわめて深刻な状況となっています。18 歳の若者が歯科技工士を目指してもらうにはど うするべきか? また、離職率を減らすにはどうしたら 良いのか? など歯科界全体で考えなければならない大きな課題である。 まずは多職種連携による地域包括ケアシステムが導入される中、歯科技工士を顔の見える職業にしていくことが重要です。また、新たな働き方改革としてこれまでの労働時間も改善していく必要があります。それに はデジタルソリューションがいい呼び水となり大きな役 割を果たすと考えています。これらの問題を解決するためには、義歯のプロフェッショナルな管理とデジ タルデータの管理そしてそこに基本的な医療知識を兼ね 備えた「臨床義歯管理工学士」(仮名)という新たな資格を与えることを提言しています。今の歯科技工士不足の 問題と予想以上に早いスピードで進むデジタル化に対応 するには、この新たな職種の存在価値は歯科医療の中には十分にあると思われます。将来展望デジタル歯科治療の将来展望を短期・中期そして長期的に分けて考えてみます。短期ビジョン的には、IOS の普及により印象から完成までのセミデジタル歯科治療が日常臨床にも広く普及すると思われます。また、それと同時に IOS の静的な歯・歯列の情報に加えて,下顎運動などの動的な情報も歯科治療に反映されるようになると考えられます。実際に IOS の一部の製品では,側方運動も同時に記録できるようになり、残存歯が多く残っているケースではデジタル FGP テクニックが可能となっています。また、伵合が崩壊した多数歯欠損の症例には、下顎運動計測装置が必要となしますが、近年、簡便で軽量な下顎運動計測システムが登場してきており、これらのシステムは、IOS の口腔内データから補綴装置を完成させる一連のデジタルワークフローとデータの共有が可能となっています。このことは、患者固有のオーダーメイドの補綴治療が可能となり、フルデジタル補綴治療(e-Prosthodontics:e プロソ)が更に現実味を帯びてくることと思われます。是非、次のステージへの準備に、従来法の重要性の再認識し、どのようにデジタル化へ組み込んでいけばいいのか考察していただければ幸いです。

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