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未来の技工法3Dプリントセラミックスについて

 3Dプリントセラミックス技術は、歯科技工の未来を支える?
 歯科業界では近年、デジタル技術の進化に伴い、3Dプリンターを活用したセラミック製作が注目を集めています。特に、精密かつ効率的な「3Dプリントセラミックス」は、歯科技工士の新しい可能性を広げる技術です。今回は、この革新的で効率的な近未来技術の特徴や利点、導入による変化についてご紹介いたします。

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その1 3Dプリントセラミックスとは

 3Dプリントセラミックスは、デジタルデザインを基に特殊なセラミック材料を(陶材やセメント、ガラス等の無機化合物)粉末に光硬化樹脂を混合したものを一層ずつレーザー照射し硬化させ積層造形する技術です。現在の削り出し方式(CAD/CAM)に比べ、形状の自由度が高く、材料の無駄を抑えられる点が特徴です。

 

  主 な プ ロ セ ス  

 3Dプリントセラミックスは、デジタル技術を駆使した精密な工程で補綴物を製作します。それぞれのステップを詳しく見ていきましょう。

 

1. デジタルスキャンとデザイン(CAD工程)

 まず、患者の口腔内を高精度スキャナーでスキャンし、歯や歯列の形状をデジタルデータとして取得します。この「デジタル印象」は従来のシリコン印象に比べ、正確で患者の負担も少ない方法です。取得したデータをCADソフトに取り込み、補綴物のデザインを行います。​

 形状設計:歯冠の形状や咬合面、隣接歯との接触点を精密に調整します。

 ・強度を考慮した設計:焼成時の収縮率を計算し、必要な厚みや形状を設計段階で最適化します。

  複雑な構造や薄い形状でもデジタル上で正確にシミュレーションできるため、精度の高い製品作りが

  可能です。

 

2. 3Dプリント(造形工程)

 CADデータを元に、3Dプリンターを使用してセラミック素材を積層造形します。使用されるセラミッ

 ク素材はペースト状または樹脂ベースで、積層後に焼成することで純粋なセラミックスに仕上がります。​

 ・積層方式:プリンターによって異なりますが、主に「光造形法」や「インクジェット方式」が採用さ

  れます。これにより、50ミクロン(0.05mm)以下の精度で積層が可能です。​

 ・材料の均一性:セラミック粒子の分布や密度を均一にするため、プリンターの設定や材料の選定が重

  要です。

 ・サポート構造:薄い形状や複雑な部位には補助構造を追加して造形を安定させます。このサポート構

  造は焼成前に簡単に除去できます。

 

3. 焼成工程(ファイアリング)

 3Dプリントされたセラミック造形物は、高温炉で焼成され、最終的な強度と美観を得ます。この工程で樹脂成分が焼失し、純粋なセラミックスへと変化します。​

 ・初期乾燥:まず低温で材料内の水分や余分な樹脂成分を蒸発させます。この段階で造形物が収縮しな

  いよう慎重に管理します。 ​

 ・高温焼成:セラミックスに応じた適切な温度(およそ800~1200℃)で焼成を行い、最終的な強度と

  硬度を確保します。収縮率を正確に予測することが、精密な適合性を実現する鍵です。 ​

 ・最終仕上げ:焼成後、必要に応じて研磨を行い、表面の滑らかさや光沢を向上させます。また、色調

  を整えるためのステイン作業もこの段階で行います。

 

 この一連のプロセスを経ることで、患者個々のニーズに対応した高品質な補綴物が完成します。3Dプリントセラミックス技術は、従来の削り出し方式よりも材料の無駄を削減し、自由度の高い設計を可能にする点で、歯科技工における新たなスタンダードとなりつつあります。​​​​​​​​​​​​​

その2 3Dプリントセラミックスのメリット

  1.  形 状 の 自 由 度   
CAM機では難しかった複雑なデザインや薄い構造が再現可能です。これにより、患者の自然な歯列や咬合により近い補綴物の製作が可能になります。

  2.  材 料 の 効 率 的 な 利 用   
削り出し方式と比較して材料のロスが少なく、コスト削減に繋がります。また、環境負荷も低減できます。

  3.  高 精 度 な 仕 上 が り  
積層技術により、マイクロ単位での精密な製作が実現。適合性の高い補綴物を提供できるため、調整作業の手間が減ります。

  4.  短 納 期 対 応   
製作から完成までの工程を効率化することで、従来よりも短期間で納品が可能になります。

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3Dプリントセラミックスの導入により、

歯科技工の現場では以下のような変化が期待される

変化1 製作スピードの向上
  即日対応のケースにも柔軟に対応できるようになります。

変化2 作業負担の軽減
  複雑な形状の加工や調整が減り、技工士の労力を軽減します。

​​

変化3 新たなデザインの可能性
  従来の手法では難しかった複雑な補綴物の製作が容易になり、

使用者の満足度向上に寄与します。

その3 3Dプリントセラミックス導入時の注意点

1.設備投資と学習コスト

高精度の3Dプリンターや特許技術を用いた専用セラミック材料の導入には、コストがかかる傾向にあります。また、デザインソフトやプリンターの操作について、新しい知識やスキルの技術習得が必要になります。多忙な技工所にとって、これを習得するための時間や労力が課題となることがあります。

 

2.材料とプロセスの選定

使用する材料やプリンターの種類によって仕上がりやプリント速度が異なるため、精度や解像度を含め強度や適用範囲、審美性を追求した仕上げ技術等を見極め目的に合った選定が求められます。

 

3.焼成時の収縮率管理

焼成工程での収縮率を考慮した設計が必要です。設定や材料の選定が適切でない場合は、適合性の低下やクラック等が生じ再作成の原因になります。

4.保守・メンテナンスの負担

3Dプリンタ―は製蜜機器であるため、定期的なメンテナンスが必要です。適切な管理がされていない場合、材料の詰まりやノズルの故障による修理の発生や機器寿命が短くなる可能性があります。

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その4 技工士の新しい可能性を拓く3Dプリントセラミックス

 3Dプリントセラミックス技術は、現在の歯科技工の在り方を大きく変革する可能性を秘めています。単なる製作効率の向上やコスト削減にとどまらず、未来の技工業界に新しい価値をもたらします。

1⃣ 個別最適化の極致へ
これまで以上に精密で個別化された補綴物の提供が可能になります。例えば、患者様一人ひとりの咬合力や生活習慣に基づいたカスタマイズデザインがAIと連携することで、自動的に最適化される未来が期待されています。
  ・AIとの融合:AIが患者データを解析し、噛み合わせやストレスポイントを計算した設計案を提案。

         技工士はそれを基に微調整を行うことで、作業効率と精度が飛躍的に向上します。

2⃣ 新しい材料の可能性
3Dプリントセラミックスは、従来のセラミック材料に加え、新素材の登場でさらに進化していきます。


  ・多機能性材料:従来の審美性や強度だけでなく、抗菌性やセルフヒーリング(自己修復)機能を備

          えた新しいセラミックスが開発されつつあります。これにより、患者の口腔内環境

          を改善する補綴物が提供可能になるでしょう。  
  ・複合材料活用:セラミックとポリマー、あるいはメタルとの複合プリント技術が進化すれば、柔

          軟性と耐久性を兼ね備えた補綴物の製作が現実のものとなります。

3⃣ テレデンティストリーとの連携
デジタル化が進む中、3Dプリントセラミックスは遠隔診療や海外の技工所との連携にも役立つ技術です。


  ・リモート技工:歯科医が世界中の患者のスキャンデータを送信し、遠隔地の技工士が設計・製作を

          行うことが一般的になる可能性があります。これにより、地域差や物理的な距離の

          壁を超えた治療が可能になります。  
  ・グローバルな競争力:3Dプリント技術を活用した高品質な補綴物の製作は、国内外の歯科市場で競

          争力を高める切り札となります。

4⃣ 教育とスキルの変革
3Dプリントセラミックス技術の普及は、技工士のスキルや教育方法にも変革をもたらします。


   ・デジタル技術の習得:CADソフトや3Dプリンターの操作スキルはもちろん、AIや新材料に関す

          る知識も必須になります。これにより、技工士が「デジタル技術者」としての役割

          を担う時代が到来します。
   ・クリエイティブな技工:デジタルツールの活用により、従来の反復的な作業から解放され、技工

          士が補綴物のデザインや審美性により集中できる環境が整います。

5⃣ サステナブルな歯科技工
3Dプリント技術は、持続可能な歯科技工業界の構築にも寄与します。


   ・材料の効率的利用:積層造形による無駄の削減は、環境負荷の低減に直結します。  
   ・再生可能材料:バイオベースのセラミック材料やリサイクル可能な素材の開発が進めば、環境に

          優しい技工が実現します。

未来を築く一歩を踏み出す
 3Dプリントセラミックスは、今後の歯科技工士にとって新しい課題と同時に、無限の可能性をもたらすソリューションとなることでしょう。精密性、効率性、審美性の向上だけでなく、患者様お一人おひとりにより合った治療を提供できる環境を創造します。  

 未来の技工士像は、「職人」からこの複雑なテクノロジーを理解することで「デジタルクリエイター」へ進化するでしょう。

 さぁ皆さん、この変化をチャンスと捉え、新技術を取り入れ次世代の歯科技工業界をリードしていきませんか?   

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