歯科技工所向け補助金について
新型コロナウイルスが5類の扱いになっても、まだまだ不安が払拭できませんが、日常を取り戻そうと忙しくご活躍されている歯科技工士の皆様にとって、デジタル化を加速させるお手伝いに、今回は「ものづくり補助金について」の通常枠とデジタル枠についてご紹介いたします。
概 要
まず、「ものづくり補助金」とは10年ほど続いている補助金で日本の企業体の90%以上を占める中小企業を広く対象にしており、革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資を支援する補助金です。景気刺激策にもつながると考えられており、補助率が従来の1/2から2/3にまで引き上げられているほか、コロナの影響を乗り越える前向きな投資を行う歯科技工所にとっても最初に検討する補助金と思われます。
最新公募期間
15次締切分
公募開始:令和5年4月19日(水)17時~
申請開始:令和5年5月12日(金)17時~
応募締切:令和5年7月28日(金)17時
※採択発表は、令和5年9月下旬ごろを予定
ものづくり補助金の補助上限と補助率は?
国が支給してくれる補助金の上限額は例年1,000万円が基本となっていましたが、 令和3年度補正予算から通常枠の補助上限額を従業員の規模に応じて、従業員数21人以上:1,250万円、6~20人:1,000万円、 5人以下:750万円に見直されました。また、正社員20名以下の製造業(商業・サービス業は5名以下)は小規模事業者の扱いとなる小規模企業向けの申請も可能で、その場合は審査上の加点など優遇措置があり、補助率も1/2から2/3に引き上がります。 例えば補助率1/2のケースでは、1,000万円の設備購入の場合は500万円まで、補助率2/3のケースでは1,500万円の設備購入で1,000万円まで支給してくれます。なお、補助金は基本的には返済不要となっています(一部収益が出た場合は例外あり)。また、国が支給する補助金は基本的には消費税別となります。
※但し、国が支給してくれる補助金は後払い(約半年〜1年後)で、設備の購入等に先に資金が必要となりますのでご注意下さい。
申請基本要件
以下の3要件を満たす3~5年の事業計画を策定し、実行することが要件となります。
① 事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させる。
(被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合は、年率
平均1%以上増加)
② 事業計画期間において、事業場内最低賃金(補助事業を実施する事業場内で最も低い賃金)を、
毎年、地域別最低賃金+30円以上の水準にする。
③ 事業計画期間において、会社全体の付加価値額を年率平均3%以上増加させる。
申請枠
2023年のものづくり補助金には下記の5つ「枠」が設けられています。
申請枠
概 要
補助上限額
補助率
通常枠
革新的な製品・サービス開発又は生産プロセス・サービス提供方 法の改善に必要な設備・システム投資等を支援。
750万~
1,250万円
1/2、2/3(小規模・再生事業者)
回復型賃上げ・
雇用拡大枠
業況が厳しい事業者※が賃上げ・雇用拡大に取り組むための革新的な製品・サービス開発又は生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資等を支援。
※前年度の事業年度の課税所得がゼロである事業者に限る。
750万~
1,250万円
2/3
デジタル枠
DXに資する革新的な製品・サービス開発又は生産プロセス・
サービス提供方法の改善による生産性向上に必要な設備・システム投資等を支援。
750万~
1,250万円
2/3
グリーン枠
温室効果ガスの排出削減に資する取組に応じ、革新的な製品・
サービス開発又は炭素生産性向上を伴う生産プロセス・サービス提供方法の改善による生産性向上に必要な設備・システム投資等を支援。
エントリー:
750万円~
1,250万円
スタンダード:
1.000万円~
2,000万円
アドバンス:
2,000万円~
4,000万円
2/3
グローバル
市場開拓枠
海外事業の拡大等を目的とした設備投資等を支援。海外市場開拓(JAPANブランド)類型では、海外展開に係るブランディング・プロモーション等に係る経費も支援。
3,000万円
1/2、2/3(小規模・再生事業者)
15次公募詳細については、下記をクリックしご確認ください
通常枠について
「通常枠」は、最もスタンダードな枠と言える内容になっています。新製品、あるいは新しい自社サービス開発、さらには生産プロセスを改善して生産性の向上・効率化させるための革新的な取り組みに必要となる設備投資、あるいは試作品の開発を支援するための補助金です。
補助の対象となる必要経費のおもな費目としては、機械装置・システム構築費、運搬費、技術導入費、知的財産権等の関連経費、外注費、専門家経費・クラスドサービス利用費・原材料費などが挙げられます。
なお、補助金学の上限は最大で1,250万円、補助率は最大2/3となります。例えば、補助率1/2となる中小企業が2,000万円を経費として使った場合には、経費の2分の1である1,000万円が補助されます。
補助金額
※従業員数に
応じて変動
5人以下 :100万~750万円
6~20人 :100万~1,000万円
21人以上 :100万~1,250万円
補助率
1/2
小規模企業者・小規模事業者、再生事業者は2/3
デジタル枠について
「デジタル枠」は、第10次公募から新設された枠で、政府が進めるDX化の一環として導入されました。デジタル枠は「自社製造プロセスの見える化」のような、デジタル技術を活用した事業展開に利用することができます。
なお、デジタル枠も一般枠の基本要件に加え、「事業内容」「経産省が公開するDX推進指標を活用した自己診断の実施・提出」など複数の追加要件が存在するため、申請前に、申請する事業経費が追加要件を満たしているか必ず確認をしてください。
補助金額
※従業員数に
応じて変動
5人以下 :100万~750万円
6~20人 :100万~1,000万円
21人以上 :100万~1,250万円
補助率
1/2
小規模企業者・小規模事業者、再生事業者は2/3
DX推進指標・自己診断フォーマットについて下記をクリックしご確認ください
補助金対象経費(設備)
① 各種スキャナー
② ミリングマシン
③ ファーネス
④ CADソフト
⑤ 3Dプリンター
これらの設備以外にも、歯科技工所の生産性を向上させることが期待できる設備導入のお考えの場合は、是非専門家の方へお尋ね下さい。
申請に必要な書類
申請に必要な書類は、申請する枠組みや事業形態によって異なりますが、共通して提出が必要な書類は以下の5種類です。政策加点のある追加資料についても
① 事業計画書
事業計画書は、Wordなどの媒体を使い原則合計10ページ以内で作成が推奨されており、PDF化して提出することが求められています。
事業計画書の内容は、公募要領で定められた3つの要件を記載する必要があります。
▼事業計画書に記載が必要な3つの要件
・その1:具体的取組内容
・その2:将来の展望
・その3:事業計画における付加価値額等の算出根拠(数値目標)
事業計画書では主に、ものづくり補助金を何にどう使うのか、なぜ使うのか、それによってどうなるのか補助金を受け取る価値を説明します。計画書を読む人に好印象を与えられるよう意識して作成しましょう。
一般的に、付加価値額は、営業利益+人件費+減価償却費として算出され、これら3項目の増加予想値を、平均3%以上になるように算出根拠を添えて説明をしましょう。また給与支給総額は、年率平均1.5%以上にすることを計画書に明記しましょう。人件費のうち給与相当額を全従業員で足して合わせて、将来にわたって年ごとに1.5%以上になっていく予想を客観的に根拠立てなくてはいけません。なお、都道府県ごとに定められている最低賃金水準を把握し、30円以上上乗せした金額を設定し全従業員の待遇にしておくべきです。
② 補助経費に関する契約書(様式1)
国が助成する他の制度との重複がないことや、公的医療保険・介護保険からの診療報酬・介護報酬等との重複がある事業ではないこと等を誓約書として提出します。
③ 賃金引上げの契約書(様式2)
ものづくり補助金では、賃金を3~5年の間に一定以上伸ばすこと等が、要件としてあげられています。
この要件をクリアできなかった場合、補助金を返済しなくてはいけないというルールもあるほど。
一方で、賃上げ幅を大きく設定する企業は、採択時に加点されます。
賃上げ誓約書は、「様式2」を使って必要事項を記載の上、提出が求められています。
事業場内最低賃金や、直近決算時の給与支給総額の明記が必要です。
④ 決算報告書(直近2期分)
・設立1年以上2年未満の企業は、1期分の書類を提出
・設立1年未満の企業は、事業計画書及び収支予算書を提出
・個人事業主の場合、確定申告書等を提出
⑤ 従業員数の確定資料
・法人:法人事業概況説明書の写し
・個人事業主:所得税青色申告決算書または所得税白色申告収支内訳書の写し
⑥ 労働者名簿
「労働者名簿」は、従業員数の確認資料の内容によって必要になります。
(1)応募申請時の従業員数が21名以上である
(2)「従業員数の確認資料」における期末の従業員数が20名以下の場合
上記2点の両方に当てはまる場合には、労働者名簿も用意する必要があります。
様式に指定はありませんが、定められている下記の内容を全て記載しなくてはいけません。
事業者名、従業員数、従業員氏名、生年月日(西暦)、雇入れ年月 日(西暦)、従事する業務の種類
いかがでしたでしょうか?長くなりましたが10年以上の歴史があり、中小企業経営者の意見と時代の変化を取り入れながら培われた補助金事業ですから、専門家と協力しながら申請をすすめ、交付決定を受け取られ有効活用をいただければ幸いです。