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​歯科技工士のための感染知識と対策例9
 

~標準感染予防策の基本になる滅菌・消毒 その1~

6.標準感染呼ぼ策の基本になる滅菌・消毒
1)標準感染予防策(スタンダードプレコーション)

  B標準感染予防策(Standard Precaution)は、「医療施設などで患者と医療従事者を感染から守るために」米国疾病予防管理センター(CDC)によって1996年に発表された感染予防策である。具体的には「感染している人も感染していない人も、すべての人の血液や体液は、感染の危険性があるものとして感染対策をしよう」という考え方である。
 歯科診療で使われる器具や設備は種類が多く、使用頻度も高いため、それらの消毒や滅菌は複雑である。特に印象体などは、限られた時間内で殺菌し変形をさせてはいけないという難しさがある。
 しかし、肝炎ウイルスなどの感染予防に対する正しい概念が確立した現在、厳格な滅菌・消毒が実施されなければならない。
 細菌を殺滅する場合を滅菌と呼び、ウイルスの感染性をなくする場合を不活化と区別して呼ぶこともある。
 全ての患者の印象体から修理義歯いい至るまでその滅菌と消毒は、スタンダードプレコーションに基づいて実施しなけらばならない。スポルディング(Spaulding)の提唱した下記の体系が多くの病院等でガイドラインとして採用されている。

 ① 滅 菌(sterilization)  

    いかなる微生物も完全に死滅させる。外科的手術器具、カテーテル、インプラントなどのクリティカル器具として直接体内に挿入されるものが対象になる。

 

 ② 高水準消毒(high-level disinfection)
 芽胞が多数存在する場合をのゾッキ、全ての微生物を死滅させる。粘膜や健康でない皮膚に接触する人工呼吸器関連機材や内視鏡などのセミクリティカルな器具が対象になる

。 
 ③ 中水準消毒(intermediate-level disinfection)
 結核菌、芽胞を形成していない細菌、ほとんどのウイルス、真菌を死滅させる。口腔内に入る補綴物や体温計などが対象。

 

 ④ 低水準消毒(low-level disinfection)

 芽胞を形成していない細菌、ある種のウイルスと真菌を死滅させる。血圧計や病院などのドアノブなどのインクリティカルなものが対象になる。

​ 製作した歯科補綴物や修理義歯は、スポルディングの滅菌と消毒基準ではセミクリティカルなものとして扱い、紫外線照射や次亜塩素酸などによる中水準消毒が必要である。

​2)滅菌法

  滅菌とは、全ての感染性因子、微生物が存在しない状態を意味する。滅菌法には、高圧蒸気滅菌法、ガンマー線照射法、ガス滅菌法がある。

​(1)加熱滅菌法

  一般的なものはオートクレーブによるものである(図1参照)。121℃、15分から20分が条件が一般的である。ケミクレーブは、水の代わりに消毒用エタノール(70%のエタノール)などを入れるもので、132℃、15分で器具などが湿気をおびることなく滅菌することができる。
 

​(2)放射線滅菌法

  放射線による滅菌は、コバルト60を用いたガンマー線照射がなされている。透過力も殺菌力も強く、プラスチック製の注射シリンジやカテーテルなどの医療器具の滅菌に利用されている。

​(3)ガス滅菌法

  グルタルアルデヒドは一般名でグルタラールなどとして知られるホルムアルデヒドで、ホルマリンガスを発生させる。ほとんどの病原体を死滅させるガスであり、人体にも強い毒性を示す。そのため、完璧に密閉された容器での使用が不可欠になる。使用後のガスは、亜硫酸水素ナトリウムで中和して、大量の水に溶かして廃棄する必要がある。密閉した装置が必要で、印象採得などの滅菌に使用される。
​ エチレンオキサイドガス(EOD)は、40℃でほとんどの微生物に殺菌できる。熱で変性するもの、水分を嫌う医療用器具を滅菌するときに用いられる。エチレンオキサイドガスは単独では爆発性であるので、炭酸ガスをボンベに混入して危険を防いだ使い捨ての缶に封じ込んだものも市販されている。エチレンオキサイドガスは有毒であるために被滅菌物件はすぐに使えず、包装からガスを抜けさせるために一定の時間をかけてガスを拡散する必要がある。

 

出展:歯科技工士のための感染知識と対策例                                発行元:公益社団法人 日本歯科技工士会
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